「天草の地鶏と、引き算のスパイス 」
【序:天草の地で出会った「王」の衝撃】
それは、天草への何気ない小旅行でのことでした。そこで僕は、それまで全く知らなかった「巨鳥」と出会います。
その名は、天草大王。 かつて絶滅し、奇跡的に復元された日本最大級の地鶏です。まずその圧倒的な大きさに度肝を抜かれました。
地元の専門店で一口食べて、その豊かな旨味と弾力に再び衝撃を受けました。 「この『王』を、僕のパイの中に閉じ込めたい」 旅の余韻に浸る間もなく、僕の頭の中はレシピの構想で埋め尽くされました。
【破:足し算の迷宮、引き算の決断】
この贅沢な地鶏をどう活かすか。和食のように焼くのもいい、煮込むのもいい。けれど、fealとして挑むなら、地鶏の旨味を活かしながら、スパイスの香りとバターのコクが溶け合う「バターチキンカレー」しかないと考えました。 しかし、ここからが苦難の始まりでした。 スパイスを重ねれば重ねるほど、複雑な香りは増す。けれど、同時に天草大王が持つ、あの野性味あふれる旨味がスパイスの陰に隠れてしまうのです。 「使いすぎて、素材を殺していないか?」 僕は、増やすことをやめ、削ぎ落とすことにしました。
【転:三種の神器と、予期せぬ相棒】
試行錯誤の末、最終的に残ったスパイスは、わずか3種類。 極限まで要素を絞り込んだことで、天草大王の旨味がスパイスの波間から力強く顔を出しました。 けれど、何かが足りない。あともう一押し、味の奥行きが欲しい。 その時、天から降りてきたアイデアが「ココナッツミルク」でした。 和の地鶏と、南国のココナッツ。天草大王自身も、まさか自分がココナッツミルクと合わされるとは思ってもみなかったでしょう。しかし、この出会いが、全てのピースを完璧に繋ぎ合わせました。
【結:地鶏のポテンシャルを、極限まで】
バターの濃厚なコク、研ぎ澄まされた3種のスパイス、そしてココナッツミルクのまろやかさと香り。それらすべてを「天草大王」という主役がどっしりと受け止める。 一口食べれば、熊本・天草の豊かな風景が広がるような、贅沢なカレーパイが完成しました。 地鶏のポテンシャルを信じ抜き、削ぎ落としたからこそ辿り着いた「王」の味。 ぜひ、その力強い旨味を体験してください。
立ち止まりそうな時、心に小さな「火」を。
熊本の地で復活した「幻の地鶏」天草大王。 その力強い旨味を、数多のスパイスで塗りつぶすのではなく、 削ぎ落とした3種のスパイスで、その輝きを研ぎ澄ませました。
刺激の中にある、深いコクと気品。 それは、単なる美味しさではなく、 「もう一度、前を向こう」と思わせてくれる、熱い活力という名の希望です。
この味わい深い「光」が、 あなたの背中をそっと押し、 新しい一歩を踏み出すエネルギーになりますように。
