「笑顔の四重奏」
【序:本場へのこだわりと、小さな拒絶】
オーストラリアのピザ屋で出会った、あのとろけるようなチーズの幸福感。それをパイの中に閉じ込めたい。
その一心で、僕はクワトロフォルマッジパイの開発をスタートさせました。 最初は「本物」を追求するあまり、ブルーチーズを入れた本格的なレシピで試作を繰り返していました。しかし、ブルーチーズ独特の強い香りは、どうしても好みが分かれてしまいます。
【破:しかめっ面が教えてくれたこと】
まだ「カフェfeal」を営んでいた頃のことです。 試作中のブルーチーズ入りパイを、遊びに来ていた友人の子供が何気なく口にしました。 その瞬間、その子は顔をしかめて一言。
「……まずい」
その言葉は、僕の胸に深く刺さりました。 「老若男女、誰もが笑顔になれるパイを届けたい」 そう願っていたはずなのに、自分のエゴに近いこだわりが、一人の子供を悲しい顔にさせてしまった。 この強烈な出来事が、僕のパイ作りを根本から見直すきっかけとなりました。
【転:たどり着いた「乳の香り」の調和】
「誰が食べても、一口で幸せになれる味」を目指し、僕はチーズの選定を一からやり直しました。 まず決めたのは、使用する全てのシュレッドチーズをセルロース(添加物)不使用のものにすること。 そして、個性の強いブルーチーズを捨て、4つのチーズの「調和」に懸けました。
ゴーダチーズ: 深いコクと風味
ステッペンチーズ: とろりと伸びる楽しさ
マリボーチーズ: 優しいミルクの甘み
サムソーチーズ: くるみのような芳醇な香り
一つひとつは決して尖った主張はしません。けれど、この4つが重なり合った時、オーブンからはこれまでにない「幸せな乳の香り」が漂い始めました。
【結:隠し味は、ほんの少しのはちみつ】
仕上げに、ほんの少しだけはちみつを忍ばせています。 チーズの塩気とはちみつの柔らかな甘みが溶け合い、サクサクのパイ生地がそれらを包み込む。 かつて僕を戒めてくれた「しかめっ面」が、今では「最高の笑顔」に変わる。 fealのクワトロフォルマッジパイは、そんな優しい願いから生まれた、四重奏(クワトロ)の物語です。
大切な人の笑顔が、最高の「希望」になる。
4種類のチーズが織りなす、濃厚で優しいミルクの四重奏。 このパイが生まれたきっかけは、 小さな子供が見せた、たった一度の「しかめっ面」でした。
難しい理屈はいらない。ただ、この一口で笑顔になってほしい。 そんな純粋な想いを込めて包み込んだ4種の個性。
頑張りすぎて心が少し硬くなってしまった時、 大切な人と、もう一度笑い合いたい時。 この芳醇な香りととろけるチーズが、 あなたの心をふんわりと、優しく解きほぐしますように。
